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2010.12.19 (Sun)

複数が関与 改善急務 園「法の適用違反」と異議 施設側は命令を不服として県に異議申立書を提出 社会福祉法人志度玉浦園

あってはならないことが起きた。県は3日、「施設内で、複数の職員が認知症を患う入所者に虐待を行った」などとして、さぬき市志度の特別養護老人ホーム「志度玉浦園」に改善命令(行政処分)を出した。

介護のプロがなぜ。施設は気付けなかったのか。そんな疑問がわく一方で、施設側は命令を不服として県に異議申立書を提出。波紋が広がっている。

問題の経緯はこうだ。
3カ月前の9月上旬、「志度玉浦園で虐待が行われている」との通報が、特別養護老人ホームを監督する県長寿社会対策課にあった。11月初旬には、より詳しい情報が寄せられ、同課は「虐待を含む違反行為の疑いがある」と判断。
11月8日から同月末にかけ、介護保険法と老人福祉法に基づく立ち入り調査を行った。
職員全員に事情を聴くなどした結果、「介護職員5人が、認知症の入所者9人に虐待を行った」ことが判明。県は3日、老人福祉法に基づく改善命令と、介護保険法に基づく改善勧告(行政指導)を園に出した。

■自覚は問わず
今回、県が認定した虐待は、「車いすを机の下に深く押し込み、動けなくした」など、今春を中心にあった7事案=上表=。認定においては、2006年に制定された高齢者虐待防止法が力を発揮した。
 
家庭・施設で介護を受ける高齢者を虐待から守るのが目的の同法。法律の定義のなかった高齢者虐待を、(1)身体的(2)介護の放棄(3)心理的(4)性的(5)経済的―に分類。合わせて国が作成したマニュアルでは、「ベッドに縛る」「無視する」といった具体例を示し、判断しやすくした。

=表=
http://social-welfare.rgr.jp/img/wkod71nx00a3.jpg

長寿社会対策課によると、7事案はいずれも職員本人が認めるか、複数の目撃があった。職員の一人は「手間を省きたかった」などと理由を述べたという。虐待の意図があったかは不明だが、同課は「高齢者虐待防止法では、虐待を『している』『されている』との自覚の有無は問わない。緊急性なども考慮し、客観的に判断した」とする。
 
施設への処分も一歩踏み込んだ。虐待防止法施行後、昨年までに虐待行為を認定された県内の施設は3つ。処分は、どれも文書指導などにとどまる。しかし今回は、▽複数の職員が複数の入所者に虐待を行った▽より弱い立場の認知症患者が被害者▽組織として対処できていない―ことなどを踏まえ、「指導」よりも重い「処分」を初めて適用した。

■把握1件のみ
一方、玉浦園では11日、樫村正員理事長が入所者の家族らに謝罪。再発防止のための職員研修なども進める半面、命令を不服として県に異議を申し立てるなど、ゴタゴタが続く。
 
異議の中身は後述するとして、玉浦園は、県が指摘した7事案の大半を知らなかった。事前に把握していたのは、行為4面の「流動食を捨てた」部分のみ。関係職員の処分は行ったが、「虐待ではない」として、さぬき市には報告していなかった。
 
県の指摘を踏まえ、園が15日に行った独自調査委員会。虐待を指摘された職員5人の聞き取りの結果、行為3面は職員が否定したが、残りは全員が大筋で認めた。調査委は虐待かどうかの判断はしなかったが、施設として行為を確認した。
 
大垣博信園長は「現場にいながら気付けず、園長の責任を果たせなかった」とうなだれる。7事案には、報告が管理職まで上がりながら、調査しきれなかった行為も含まれていた。約2年前から、職員向けに行ってきた虐待防止の研修も十分生かされなかったようだ。

■聞いた事ない
さて、異議申し立ての話題に移る。一体、施設側は何を不服としているのか。
 
樫村理事長は「虐待を疑われる行為があったことを否定するわけではない」とした上で、「法律の適用違反がある。高齢者虐待防止法には『虐待の通報は市町に行う』とあり、県に調査権限はない」などと主張。「通報を受けた県はさぬき市に連絡し、市が調査するべきだった」と強調する。
 
これに対し県は「虐待防止法では一義的に市町が調査するとあるが、これは老人福祉法、介護保険法が定めた県の調査権限を制限するものではない」と説明。「今回は県に直接通報があった。さぬき市にも連絡して対応しており、法的手続きに問題はない」とする。
 
厚生労働省認知症・虐待防止対策推進室は「高齢者虐待をめぐっては、『虐待か、不適切な介護か』を争う事例はあるが、法の入り口論でもめるケースは聞いた事がない」と話す。
 
いずれにしても、問題解決に向けたアプローチとは別次元の話。園内からは「入所者が安心できる体制の再構築を急ぐ方が大事」との声も漏れ聞こえる。


氷山の一角
通報しづらい環境懸念 教育、待遇改善も不可欠

「施設での虐待が表面化することは依然少ない」。いち早く高齢者虐待の問題に取り組み、第一人者として知られるNPO法人・日本高齢者虐待防止センター(東京)の田中荘司理事長は、今回の志度玉浦園の事態を「氷山の一角」と指摘する。
 
厚生労働省の2009年度調査によると、高齢者の家族からの虐待が1万5615件に対し、施設の職員による虐待は76件。家庭に住む高齢者の方が圧倒的に多いせいもあるが、施設の場合には虐待の通報が外に出にくいことも一因だ。
 
その理由について、田中理事長は「通報者の秘密は守られることになっているが、ばれてしまい辞めざるを得なくなるのを恐れて、職員は通報をためらう」と説明。さらに「幹部は地域社会から悪く思われることを最も恐れている」とし、内部でうやむやに処理する場合があるという。
 
また「職場の人間関係がおかしくなるから」と注意を控えるなど、内部けん制が機能しないことも。田中理事長は「職員から指摘があっても、個別の出来事で終わらせてしまい、全体の問題として組織で対応する仕組みができていない」と問題点を挙げる。
 
こうした現状は高齢者虐待防止法の施行から約4年半が経過した今でも依然、課題として残されている。職員の意識も同様だ。県が行った志度玉浦園の職員39人のアンケートから実態を垣間見ることができる。
 
高齢者虐待に該当すると思う行為を聞いたところ、「車いすと机の間に挟んで動けなくする」「人前で恥をかかせる」「無視する」は32人、「裸で放置」「四肢を縛る」は34人が「そうだ」と回答。国のマニュアルに照らすと、どれも虐待行為だが、数人はその認識がなかった。
 
同法の成立にも尽力した田中理事長は「虐待の基本的知識や高齢者の人権意識はまだ徹底されていない」と苦言を呈する。
 
ただ、どんな行為を虐待として認定するか。施設を調査する県や市町によって判断はぶれている。
 
今春、宇都宮市内の介護老人保健施設で、入所者の上半身裸の姿を職員が携帯電話で撮影した行為などが発覚。同市は「極めて不適切」と改善勧告したが虐待とは認定しなかった。同市は「行為だけ取り上げれば虐待との意見もあったが、当該の職員が退職して連絡できないなど客観的な材料を調査で得られなかった」と理由を説明する。
 
「数学と違って、定義はあっても解釈に違いが出るのは当然。オーバーに言えば、自治体の数だけの解釈が起こりうる」と田中理事長。どこからも異論が出てこないような基準の設定は難しいが、「自治体が通報への対応を積み重ねていく中で、段々と虐待の範囲が固まってくる」という。
 
虐待行為の認定をめぐる見解の相違は、志度玉浦園の場合のように施設と自治体との間でも生じる。自治体が及び腰になってしまう恐れもあるが、田中理事長は「自治体はやはり厳格に対応するべきだ。施設側にとっては不満かもしれないが、高齢者の人権や尊厳の重さを考えてもらうことにつながる」と訴える。
 
虐待問題を「職員個人の問題として処理してしまってはいけない」という意見は多い。介護職場の待遇改善などを訴える日本介護福祉士会の石橋真二会長(県介護福祉士会会長)は「職員個人の資質に原因があることは間違いない」と指摘した上で「人員配置や人材育成を含む労働環境の改善に取り組まないと問題は解決しない」と強調する。
 
介護は重労働だが、収入は少なく、多くの介護職員がストレスを抱えているのが現実という。そのはけ口が弱いお年寄りに向けられる恐れがあるという認識に立ち、「普段から『何が虐待なのか』という教育を行わなければならない」と補足した。
 
徹底した原因分析と同時に、組織として、職員の労働環境や待遇の改善にも取り組まなければ、真の問題解決につながらない。
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