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2014.05.27 (Tue)

川崎市の社会福祉施設でオウム病の集団感染

国立感染症研究所は5月22日、川崎市内の社会福祉施設でオウム病の集団感染が発生したと報告を受け、発表した。これまで国内では、動物園と鳥類飼育施設でオウム病の集団発生が幾つか報告されていたが、鳥や動物の飼育と関連のない施設での集団発生は今回が初めて。

オウム病は、細菌のオウム病クラミジアが原因の人獣共通感染症。主に感染した鳥の排泄物中に含まれる菌を吸入して感染する。1~2週間の潜伏期間後、発熱や乾いた咳などの症状とともに、胸部X線撮影で肺炎(非定型肺炎)が認められる。オウム病は感染症法で4類感染症に定められているため、診断した医師は直ちに保健所に届け出る必要がある。
オウム病は、Chlamydophila (Chlamydia) psittaci(C. psittaci)を原因とする人獣共通感染症である。主に感染鳥の排泄物中に含まれるC. psittaci を吸入して感染するが、ペットのインコ等から口移しの給餌により感染する孤発例も多い1)。集団発生例に関しては、国内において動物園と鳥類飼育施設で発生した事例がこれまでに報告されているが2-5)、鳥や動物の飼育と関連のない集団発生の報告はない。

2014年2月に川崎市内の社会福祉施設で、肺炎と診断された施設利用者が短期間に複数名発生した。現場の調査を実施し、同時に医療機関への検体提出を依頼して、川崎市健康安全研究所において病原体検索を行った結果、C. psittaciによる集団感染と判明したので概要を報告する。

端緒と施設概要:2月28日の施設からの第一報によると、2月24日以降、5日間で肺炎患者が4例発生(うち3例が入院)し、職員も2名発熱していた。保健所、本庁および健康安全研究所での情報共有とともに、施設に連絡して利用者および職員全員の健康観察を開始し、2月28日から施設での業務はいったん中止となった。さらに、医療施設への情報提供を行い、検体採取(血清、咽頭ぬぐい液もしくは気管洗浄液)を依頼することとした。

通所者は83名(定員80名)で、年齢は18~70歳(年齢中央値45歳)、男女比は2:1、明らかな免疫不全等の基礎疾患のある者はいなかった。職員は24名であった。施設における業務で、薬品の使用はなく、使用水も上水のみであった。施設内の清掃や消毒は行き届いており、入浴施設などの設置もなかった。エアコンの設置前は、室内が高温多湿になりやすい環境であったため、換気扇が多く設置されていたが、土日の休みの際は換気扇を止めており、平日もすべて稼働させているわけではなかった。

2013(平成25)年夏に開始された近隣の工事に伴い、周辺に鳩が増え、換気扇の屋外フードの内側に巣を作って繁殖するようになった。特に2階の部屋に設置された換気扇の屋外フード内には鳩のヒナも目撃されている。施設内ではペット等の動物の飼育はしておらず、周囲に病気の動物等はいなかった。

検査結果と患者発生状況:初発患者のうち1例の検体(咽頭ぬぐい液・全血・血清)が、3月1日に川崎市健康安全研究所に搬入された。患者は高熱を主症状とするもの気道症状に乏しく、抗菌薬による市中肺炎の初期治療に反応しないことから疾患の鑑別に苦慮したため、川崎市健康安全研究所においては呼吸器疾患ウイルス一般および除外診断として細菌についての検査も実施した。

リアルタイムPCRによるインフルエンザA型(インフルエンザH5、H7亜型含む)、MERSコロナウイルス、アデノウイルス、RSウイルスの検査は陰性であり、コンベンショナルPCRによるヒトメタニューモウイルス、ライノウイルス、サイトメガロウイルスの検査も陰性であった。LAMP法にてマイコプラズマ陰性、肺炎球菌・インフルエンザ桿菌・髄膜炎菌はグラム染色および培養にて否定、抗原検査キットでも肺炎球菌・インフルエンザb型菌・髄膜炎菌はすべて陰性であった。レジオネラ菌は培養にて陰性が確認された。しかしながら、クラミジア属のompA遺伝子の保存領域におけるコンベンショナルPCRを行ったところ、咽頭ぬぐい液から目的の位置にバンドが見られたため、再度PCRならびにDNAシークエンスを実施し6)、最終的に集団発生の検知から3日でC. psittaciが原因と判明した。その後搬入された検体(咽頭ぬぐい液もしくは痰)と合わせて、計11例中4例からC. psittaciが検出され、ompA遺伝子の可変領域におけるgenotypeの特定が可能であった3例はすべてgenotype Bであった(図1)7)。

さらに、2階の部屋に設置された換気扇フード内の鳩の糞からも、C. psittaci (genotype B)が検出され、患者から検出されたC. psittaciの遺伝子配列と完全に一致していることが明らかとなった。

調査のための症例定義:1月27日~4月4日までの期間に、施設に出入りした利用者や職員のうち、発熱もしくは呼吸器症状があり、PCR検査でC. psittaci が検出された者を確定例、発熱もしくは呼吸器症状があり検査は実施されていないか陰性で、画像で肺炎像を呈し、インフルエンザ、マイコプラズマ、レジオネラもしくは肺炎を合併する可能性のある呼吸器細菌感染症など他の主要な呼吸器疾患が否定された者を可能性例、38.5℃以上の発熱があり検査は実施されていないか陰性で、肺炎と診断はされず他の主要な呼吸器疾患が否定された者を疑い例と定義した。

患者発生状況:症例定義に合致したのは12例(男性9例、女性3例)で、年齢中央値は37歳(19~52歳)であった。確定例が4例、可能性例が2例、疑い例が6例で、12例中5例は職員(全例疑い例)であった。肺炎を合併したのは6例(うち検査確定例4例)であり、いずれも2階の部屋の利用者であった。肺炎の2例中1例はARDS(急性呼吸窮迫症候群)を、別の1例は多臓器不全を併発していたが、C. psittaciによる感染が判明したためミノサイクリンの投与を開始したところ、症状が劇的に改善した。

患者の発生は2月24日~3月1日に集中しており、施設利用者7例は2階の部屋を利用し、施設外での共通点はなかった。3月4~7日まで業者による清掃と換気扇フード内の鳩の駆除および防護網の設置が行われ、その後、疑い例と可能性例の発生はあったものの確定例はなく、作業から4週間が経過したため終息と判断した。

考察:今回の事例では、同一施設内で発生した肺炎患者4例の呼吸器検体からC. psittaci(genotype B)が検出され、さらに換気扇の室外フード内の鳩の糞からも同一の菌が検出された。ドバトのC. psittaci保有率は20%と、他の動物に比し高いが、2013年8月から換気扇のフード内におり、半年以上接触の可能性があったにもかかわらず肺炎患者の発生はなかった。したがって、通常であれば糞からの同菌の検出をもって感染源と特定することは難しいと考えられる。しかしながら、利用者は動物との接触や他の共通点がなく、同一階の部屋で短期間に集中する患者発生であったため、1~2週間の潜伏期間を考慮すると2月15~17日頃に何らかの理由による一点曝露があったのではないかと考えられた。

2014年は、2月14~16日の間、2月中の神奈川県内の風速が最大となり、最低気温が0℃と低く、降雨量も最多であった。さらに2月14日は大雪で、翌15日、16日は施設が土日で休みのため換気扇を使用しておらず、積雪のためフード内に鳩が避難した可能性も十分考えられる。換気扇が複数設置されている場合、一部の換気扇のみを作動させると他の換気扇が吸気となることがわかっており、2月17日の施設再開の際に一部の換気扇の作動により、C. psittaci を含む多量の糞が室内に舞い込み、吸入したことで感染が成立し、一点曝露による肺炎の集団発生に繋がったのではないかと推察された。

国内で一般的に見かけるハト科の鳥であるドバトは、本来、乾燥地帯に生息し、岸壁の割れ目などの高い場所に営巣していたカワラバトが家禽化したもので、その習性からマンションやビル等の人工建造物が営巣場所になることが多く、しばしば糞害が問題になる。今回の事例のように天候や環境といった特殊な条件が揃うと、C. psittaciの保有率の高さから、再び同様の集団発生が起こらないとも限らない8, 9)。ドバトが集まる場所では、定期的な清掃を実施して感染の防止に努めるとともに、清掃業者にも注意喚起をする必要がある。

全ての記事を表示する リンク元・移動先ランキング 最終更新日:-0001/11/30

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